着いた登山口は標高1,850m、櫛形山は2,024m、快適な快適なプロムナードだった。

  北岳、間ノ岳は雄大で、鳳凰三山まで見えた。そして、アヤメ平の高山植物の見事なこと!     

                ~2023年8月10日(木)~

 

 山笑会のスタッフとして初めての幹事案件だ。年度の始めに、櫛形山企画の幹事を引き受けた時は、南アルプスの前衛の山ということしか知らなかった。むしろ、背後にそびえ、ある時期、毎年のように登っていた南アルプスの山々に思い入れがあったからだ。しかし、櫛形山までのアプローチや特徴を調べていくと、どのコースを選んでもアクセスが容易でないことに気がついた。登山口まで公共交通機関の利用は難しく、登山口までタクシーを使わなければならない。その条件下で、日帰りでスケジュールを組む必要があった。企画から実施までそう簡単ではないミッションであることをひしひしと感じてきた。

 

 

 募集を始める約2ヶ月前に、プライベートだが下下見も兼ねて配布チラシでも案内をしていた池の茶屋林道登山口を起点と終点とする周回コースを、実際に歩いてみた。南アルプスの雄大な眺望、植生豊かな原生林、アヤメ平の豊かなお花畑を五感で味わって深い感動を覚えた。たとえ、遠方でアクセスが悪くても、この地は、訪れる価値があることを確信した。


裸山の幹事班(背景は北岳、岸本)     裸山の稲葉班(稲葉)        裸山の小野班(小野)

 82()にスタッフ(稲葉・小野)3人で下見をした。甲府駅からだとタクシーで、約80分かかり、登山口の池の茶屋林道登山口まで途中から標高差約1,000メートルを曲がりくねった林道を上がった。この日は、天気もよく、アヤメ平では、高山植物が豊かに花を咲かせていた。何と至近の距離でニホンカモシカに遭遇するサプライズもあった。きっと自然の織りなす豊かなドラマに参加者の皆さんは喜んでくださるだろう。期待が大いに膨らんだ。そして本番の日も下見と同様、天候に恵まれることを祈った。

 

 集客は、有難いことに伸び、8月を前に24人の定員に達した。ところが、本番の日が近づくにつれて、台風6号の接近に伴う影響もあり天気も怪しくなってきた。85()に申し込みをされた皆さんに下見報告のメールをした。何人かの方からお返事をいただいたが、天候のことを気にかけ山行の実現を祈る気持ちがひしひしと伝わってきた。幹事は、天候に注視しながら本番と延期日のどちらも実施することを想定しながら準備をした。皆さんの気持ちが通じたのか、23日前から東日本と南アルプス周辺は、晴のマークがついた予報が出始めていた。本番の前日が雨模様だったので、本番当日は、朝からちょうど天気が回復する途中から登り始める。昼頃には、晴れて青空が広がることを予感した。天気は大丈夫そうなので予定通り810()に決行することにして前日に皆さんへ最終案内を送った。諸事情で3名の方がキャンセルになったが、21名の参加者の方々が集うことになった。


 櫛形山山頂の幹事班(岸本)     櫛形山山頂のスタッフ班(稲葉)   櫛形山山頂のスタッフ班(小野)

  そして、本番当日の朝、幹事は743分に甲府駅へ到着した。北口の公衆トイレの位置を確認し、タクシーの運転手に挨拶をすると、スタッフの稲葉と受付を始めた。タクシーの運転手の方が、改札口の前で手持ち看板を持ち誘導いただいたので助かった。ところが、あずさ1号が、事故のため約10分遅れ、甲府駅へ特急を利用された皆さんの到着も遅れた。その後のスケジュールの遅れを幹事は心配したが、スタッフ(稲葉・小野)と参加者の皆さんが、お互いに受付の流れに慣れていてスムーズにいったこと、皆さんが素早くジャンボタクシー(9人乗り)3台に分乗してくれたおかげで、約10分遅れで甲府駅に850分頃に出発できた。

 

 予定の時刻よりも約15分遅れて1015分頃に、池の茶屋林道登山口に到着した。各自で手洗いと体操を済ませ、装備を整えた。幹事から短く挨拶と開校式を行い、3班に分かれて出発した。登山口は、標高1,855メートルもあり、冷涼で晴れ間が広がり爽やかだった。スタートしてから、程よく間伐されたカラマツ林の中、整った登山道を歩いた。あたりを見渡すと太陽の光がよく届き林床植生も豊かだ。シダ類が豊かで、ミズナラやダケカンバなどの落葉広葉樹も明るいところに生えている。バイケイソウやイケマの群落も現れ、ところどころ足元にはサワギクやミヤマタニタデの可憐な花々が咲いていた。幹事班(岸本班)は、葉の先端が凹になっているヤハズハンノキ、大きく柔らかいシラキの葉の感触、大人の掌と同じくらいの大きさのテツカエデの葉を参加者の皆さんと楽しんだ。

ゴール間近の長い隊列(郡司さん) 

裸山で南アルプスを展望(川原さん)   フタバラン(高橋さん)


  北岳展望デッキに到着すると雲の切れ間から晴れ間が広がり、南アルプス北部の山々が現れ、雄大な山容に皆さんのテンションも一気に上がった。山座同定をしながら写真撮影を楽しんだ。休憩後、しばらく歩くとゆるやかな下りになった。カラマツが少なくなり、コメツガやナナカマドやダケカンバ、カエデ類が増えた。森は暗くなったが豊かさは変わらないようだ。上を見上げると太陽の光を受け止めようとヒロハカツラがまるい葉を広げている。途中、もみじ沢で休憩をとり、皆さんはカエデ類の葉の形を見ながらカエデの種類を言い当てていた。その数からかなりの種類のカエデがあり紅葉の時期に来ても楽しめるだろう。

 

 もみじ沢を出るとゆるやかな登りになり、途中でかわいらしいフタバランの花を見つけた。トラバースするように下ると、裸山のコルに1200分頃に通過した。何と時間通りだった。出発したとき15分遅れだったので見事に挽回していた。ここから先は、再びカラマツ林の樹林帯になり森が明るくなる。サルオガセが豊かに樹皮に着生し、枝や幹に下垂している。その景観は幽玄な雰囲気であたかも童話の世界にいるかのようだ。皆さんは、サルオガセの手触りとアートのような景観を楽しまれていた。 


    裸山で(川原さん)       タムラソウ(郡司さん)   サルオガセが囲む幽玄な雰囲気(岸本)

 

  1235分頃に本日のクライマックスであるアヤメ平に到着した。植生保護のため囲いがあり扉を抜けると息をのむような景色が展開された。マルバタケブキ、シモツケソウ、ヤマオダマキ、グンナイフウロ、ヤマハハコ、キオン、ヤナギラン、タムラソウ、ヤマブキショウマ、ツリガネニンジンなどが登場し、まるで豪華絢爛な絵巻でもみているようだった。アヤメ平の高山植物の花々に眼福だったが、何よりもそれらを幸せな表情をして楽しんでいる皆さんを見て幹事は幸せだった。木道を歩きながらキンポウゲ、コウモリソウ、ミヤマシシウド、マツムシソウが多くなってくると予定通り、13時頃にあやめ平避難小屋につき、昼食休憩にした。

 

 1320分頃に出発すると、先頭を前半までリードしてくれた小野班を幹事班(岸本班)と入れ替えた。少し遅れて稲葉班が続いた。再び亜高山帯の針葉樹の森を15分ほど歩いた。視界が明るくなると、お花畑を左側に巻くように登ると裸山の山頂に到着した。天気は、すっかり回復して青空が広がっていた。何と白峰三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)がすべて見えるではないか!彼方の雲海の上には、甲斐駒ヶ岳の頂上が白い鋭角をのぞかせ、アサヨ峰や鳳凰三山にもほどよく雲がかかっていた。雄大な名峰たちの演出に皆さんは歓声をあげ、山座同定を楽しみ記念撮影を行った。

    キリンソウ(稲葉)

原生林の巨樹(高橋さん)

  ヒロハカツラ(郡司さん)


 裸山を出発してから、カワラナデシコやマツムシソウが多く咲くお花畑を楽しむとしばらく原生林の中を歩いた。厳しい風雪や雨の影響で枯損木や倒木もあり、それらも含め林床は苔で覆われていた。巨木には、サルオガセが着生していて迫力があった。年数をかけて自然が創り出した景観がとても美しかった。途中で、幹回り8.1メートル、樹齢約300年のカラマツの巨木に感動し、植生保護されたアオバヒョウタンボクを鑑賞した。パラボタン平と呼ばれる少し開けたところに出ると再び稜線に取りつき、約10分すると櫛形山の山頂(標高2,052m)に着いた。隊列がやや伸びていたので、ここで再び3班が集まり今後の動きを確認した。最後の休憩をして記念撮影をした。

 

 出発してすぐにもう一つのピークでもある奥仙重を踏むと登山道は下りになった。途中、展望がよくなり、南アルプス南部のビック3である荒川岳、赤石岳、聖岳が姿を現した。裸山からパラボタン平までのタイムを少しタイトにしてしまい、やや時間が押してしまった。タクシーと甲府駅での接続のことが気になっていたので、眺めながら通過することにした。皆さんと南アルプスの南部の山々をゆっくり眺める時間を設けられなかったことがこの山行の唯一の心残りだった。時々、振り返りながら森の中の登山道を10分ほどやや歩を早めて降りていくと、1515分頃に池の茶屋林道登山口に全員辿りついた。駐車場での皆さんの動きは素早く、3台のタクシーに8人ずつ分乗した。甲府駅に着いたのが、1635分頃だった。そこで解散とした。どうやら1644分に甲府発の特急列車には間に合ったようだ。同行したスタッフもタクシーの支払いを済ませると甲府駅で解散した。すべてを見届けると幹事も帰途についた。全てが無事に終わり、胸を撫で下ろした。

 

 

 この度はご参加をいただき誠にありがとうございました。初めての幹事でしたが、皆様のおかげで多いに楽しめました。ご協力をいただいた皆様には、心より感謝申し上げます。また、一緒に山行ができる日を山笑会一同楽しみにしています。

・参加者:21名(申し込み24名、キャンセル3名)

・スタッフ:岸本(幹事)、小野(班長)、稲葉(班長)

・報告:岸本雷太(30年)、写真提供(岸本、小野、稲葉、高橋貴美子さん、川原さん、郡司さん)

    高橋(貴)さん、川原さん、郡司さん、写真の提供ありがとうございました。

 以上