これ以上ない晴天に恵まれた2日間だった。金峰山組は五丈岩(ごじょういわ)をたっぷり堪能し、甲武信ヶ岳組は五丈岩をはるか遠方から眺めた。めでたし、めでたしの企画だった。 ~2024年10月21日(月)~22日(火)~
【金峰山の報告(福山 容子)】
塩山駅からジャンボタクシーで1時間、奥秩父縦走路の主脈上に位置する大弛峠(標高2360m)が今日の登山口だ。そこから目指す金峰山の標高は2599m。そう書くと標高差はわずか240mかと思われるが、そこは百名山たるもの。そう簡単には登らせてくれない。コブやピークを越え、大きな岩をよじ登り、ようやく山頂に到着する。帰路もまったく同じルートをたどるため、累積標高上り600m、下り600m。なかなかの頑張りが必要なのだ。そのご褒美として、天高く澄んだ秋空のもと素晴らしい景色に出会えた一日となった。
出発は9時。コメツガやシラビソの甘い匂いの立ち込める樹林帯を抜け、コブをひとつふたつ超え、岩尾根を登ると朝日岳(2579m)の開けた山頂に着く。参加者の皆さんは目の前に広がる360度のパノラマビューに大興奮だ。背後には国師ヶ岳がどーんと鎮座し、甲府の街並みの向こう側に御坂山地。その上には富士山が美しい弧を描いている。前方には目指す金峰山頂の五丈石が見えていた。
朝日岳で集合写真
来ましたね~、五丈岩
金峰山で集合写真です。
朝日岳から急なガレ場を下り、再び樹林帯へ。ダケカンバやナナカマドの落ち葉が広がる山道を上る。やがて両側にアズマシャクナゲやハイマツが現れ始め、白い花崗岩砂に覆われた賽の河原に出る。ここから重なり合う大きな岩を両手を使いながら乗り越えると、ようやく金峰山の頂上に到着する、そして金峰山のシンボル五丈岩が間近にそびえる広場で昼食をとった。
山頂からの展望は素晴らしく、雲海の上に頭を出した富士山、にょきにょきした岩の瑞牆山、八ヶ岳、南アルプス、浅間山の山並みが一望できた。山頂をあとにした時には、参加者の方から「お名残惜しい」という言葉が思わずこぼれるほどの絶景だった。帰路は来た道を忠実に戻り、3時15分に大弛峠に全員無事到着。塩山駅で解散となった。山笑会としては3回目となる金峰登山。ン十年ぶりに金峰に登ったという方、始めて登ったという方、それぞれに満足された表情で下山され、報告者もとても嬉しかった。
奥秩父の盟主であり、古くから山岳信仰の山として栄えた金峰山(甲州御岳山)。今年の秋、麓の金櫻神社から山頂の五丈岩までのかつての表参詣道がクラウドファンディングにより整備され復活したという。そんな古道もいつか歩いてみたい。
岩尾根を縦走中(金峰山組)
まずは国師ヶ岳で景色を満喫
写真だとあっという間だが、ここは行程で半分に近い国師のタル
【ここから甲武信ヶ岳コースの報告(稲葉 力)】
散々天気を心配したのだが徐々に徐々に好転し、何と2日前には参照したすべての天気予報が2日間にわたって「晴れ」という願ってもない好天気となった。幹事は6時52分着の電車で塩山駅に到着したら、大月で前泊された方が一名と他一名が一緒になった。残りの方はすべて7時22分着で到着。班長二人がいつものように手際良く参加費とタクシー代を集めて下さって、7時33分には出発できた。
さて、塩山~大弛(おおだるみ)峠間は、この時期(10月最後の週まで)ならば栄和交通が運営するバス&タクシーがある。料金は片道3,000円。ただし、ネットの募集で、募集したその日に満員となる。どうやら30名のようだ。平日は自家用車かタクシーしか手段はない。タクシーはセダンで行くと14,500円、ジャンボならば約17,000円だ。1~2名でタクシーで行こうと思える金額ではない。ついでだが、甲武信小屋も平日は空いているが、土曜日は満員(40名)のことが多いようだ。10月21日は、山笑(やまにこ)会はジャンボタクシー2台で大弛峠に向かった。参加者が15名、スタッフ3名だった。甲武信ヶ岳組が9名、金峰山組が6名だった。21日の甲武信小屋には13名の宿泊者がおり、内11名が山笑(やまにこ)会だった。
実は、参加者を募集するにあたっては大変、悩んだのだ。甲武信ヶ岳を希望される方が6名もいるだろうか。金峰山ばかり希望されるのではないかと。実際に募集して杞憂に終わったのだが、当初は甲武信に11名も希望されたのだ。驚きではないか。参加人数の件もあり、小屋番との打ち合わせでも散々到着時間について心配されたのだ。
意外と手こずった国師からの下り
甲武信の道はコケの道、これはジョウゴゴケ
途中の岩場で一呼吸、国師から歩いて来たね~
さて、金峰山組は先に出発した。彼らは、金峰山まで行き、往復して大弛峠に戻って来るのだ。14時45分に到着の予定で、15時にジャンボタクシーを呼んである。さて、タクシーは大弛峠に8時45分に着いて(ちなみにバス&タクシーだと予定時間は8時55分だ)9時4分に出発した。大弛小屋の前を通るとすぐに木製階段が続く急な山道となる。ここは朝一番なので、意識してゆっくり歩いていただく。体が温まった頃に、岩場に出る。展望台だ。ここで気分よく、こころなしか体調も良くなる。ここを過ぎると階段は終わり、ややゆるやかな道となる。山道にコメツガの葉が覆いかぶさっている、シラビソも見られる。5日の下々見では、雨でもないのに、コメツガとシャクナゲの夜露で体が散々ぬれた。展望台の景色で少し気が楽になって、約1時間で国師ヶ岳に着いた。コースタイム通りでまずは安心した。元気に集合写真を撮った。富士山も美しく、金峰山の五丈岩のトンガリが目立って面白い。金峰組はまだ金峰山には着いていない。
さて、実はここから「富士見」までは、甲武信の小屋番と相談した問題の個所なのだ。危険でも難しい場所でもないのだが、あちこちに書かれている「コースタイム」より通過時間がかかるのだ。まあ、ご自分で計算上、6時間半で到着できると思っていたら7時間かかるらしい。われわれは下々見、下見の経験、山笑(やまにこ)会のこれまでの経験から小屋には16時10分頃に到着と想定していた。小屋番には「まあ、遅くとも17時には着いていただければ、」といわれていたのだ。
ここまで来たらもう安心、顔に解放感があふれる、水師(みずし)に到着
やりましたね、ここが甲武信ヶ岳山頂、バンザイ!16時15分でした。小屋に電話しました。
甲武信小屋のテン場、この日は2張でしたね。いつ撮ったんでしょうね(葛西さん)。
国師ヶ岳は10時12分に出た。ここから、ところどころ緩い下りがあるのだが、おおむね、ずっと視界の先まで続く、奈落に行くのではないかと思う下りが続く。相変わらず、コメツガ、シャクナゲのトンネルだ、シラビソも目に入る。足元はコケの絨毯だ。同じ種類であろうコケが延々と続く。周囲は、原生林そのもので樹木が密生している。倒木が多い。下りが1時間半程度続くので、足の負担を考え、意識的にトップの班長にペースダウンしてもらった。
30分ごとの2回の給水タイムをはさみ、11時51分に「国師のタル」についた。下りの「底」なのだ。ここで昼食タイムとした。さて、ここからが体力的、気分的に辛い、緩い登りと緩い下りが連続する。1~2回ならば問題ないが5回ほど続くので一人だと気が滅入る。団体で歩くと気がまぎれる。コースタイム上、中間点の「東梓」には12時51分に着いた。狭い岩場のポイントだ、ここでも団子状態で集合写真を撮った。予定した時間より30分ほど遅かったのだが、先頭を歩く班長にはどうやら想定通りだったようだ。
東梓から、「両門の頭」、「富士見」と通過点がある。コースタイム上、負担が大きいのは「富士見」までだ。みなさんを励まし励まし、そしてみなさんも頑張って13時48分に「両門の頭」に到着、「富士見」には14時43分に着いた。中間点の岩場は絶好の展望ポイントであり、多分、みなさんはここでしばらく休みたいと思われたことだろう。しかし、班長も幹事も気持ちを押さえて先に進むのだ。「富士見」は名前に反して展望はない。ここから先は、時間の読める、必ず小屋に到着できる、安心できる「安全圏」なのだ。班長も幹事もここで本当に安心した。
これがテラス、ここで食べて飲むのが、また楽しみ(鈴木さん)
22日、木賊山から下るときの紅葉です(鈴木さん)
小屋到着寸前、ガスが稜線を越えて流れる絶景(鈴木さん)
富士見を出ると少し下る。国師と甲武信はほぼ同じ標高なので、下った分だけ登るという必然性がある。幹事もみなさん同様、下りは楽だと思いつつ「これだけ登るのか」と思いながら下った。疲れているのだ。しばらく歩くと当然だが、甲武信ヶ岳までの最後の登りになった。みなさんの歩き振りを拝見すると明らかに苦しそうな方もおられたが、最後に歩く幹事の一瞥の範囲内にみなさん収まっていた。15時26分にその登りを終えて14分ほどの下りでお待ちかね水師(みずし)に着いた。水師から甲武信岳まではコースタイムで25分、甲武信岳から小屋までは15分、合計で40分というのは、これで到着できる!という確実なコースタイムなのだ。水師でも集合写真を撮るとみなさん、うれしそうな顔をされていた。幹事はここで小屋番にラインを送ったが、返信はなかった。
早々に甲武信の山頂に向かった。しばらく緩やかな登りがあり、それから少し急になり、最後は岩場に飛び出て山頂が見える、という至福のときが待っている。しかし、それがわかるのは経験者のみだ。みなさんにその情報を提供しつつ登った。そして、とうとう岩場に出た。班長が視界の先で早速写真を撮りながら呼んでいる。そして、16時14分に甲武信ヶ岳の山頂に全員が着いた。バンザイだ!この瞬間のために頑張ったのだ、という気持ちが、みなさんにあふれていた。幹事は小屋番に電話で山頂にいることを伝えた、「了解」とお答え。みなさん、満足されてなかなか動こうとされないが、心を鬼にして小屋に向かっていただいた。
小屋には16時39分着。小屋番と相談して夕食は15分遅らせて17時15分にしていただいた。小屋に泊ったのは13人、内11人が山笑(やまにこ)会だった。名物のカレーの夕食を全員でいただいた。お代わりをされた元気な方もおられた。夕食後、有志は小屋特製のコーヒーを注文し、有志(幹事他のことだね)は熱燗をいただき、早々と19時には就寝した。消灯は20時である。
木賊(とくさ)山、今日の仕事は終わったぜ、と思ったかどうか。
下山口まで、あと30分かからない場所、顔に喜びがあふれていますね。
苦しかった「富士見」の登り、やれやれだよね。顔がうれしそう。
翌朝は5時に起きた。照明がつくのだ。めいめい朝の準備を済ませ、5時半から朝食となった。朝食もいつものメニューだ。追記しておくが、小屋のトイレは水洗だ。水は自由に使える。6時半に出発しますよ、と伝えておいたのだが、みなさん要領よく、小屋の前で記念写真を撮り、6時20分にはスタートした。
登ってすぐに右手に尾根に出る道があり、そこは岩場の展望箇所だ。まだ少し夜が明けていない感じの場所で富士山、木賊(とくさ)尾根、甲武信の展望を楽しんだ。そこから木賊山までの朝一番のアルバイトがきつかった。しかし、真砂土(まさど)の斜面を登るのも高度感があって面白かった。木賊山から少し下って、右の分岐に入る。そこからは約3時間半、一気の下りだ。昨日の疲れで足元が怪しいので慎重に下っていただいた。途中の岩場も展望箇所だ。少し休憩した。右に険しい木賊尾根と鶏冠山が見え(「けいかんざん」ではなく「とさかやま」)、次第に紅葉が見事になる。そして緩やかな山道になりミズナラの落葉が増え、ヤマグリが地面を敷きつめるようになると下山口の旧西沢山荘が近い。足の具合が悪くなった方も頑張って下さった。予定より約30分遅れで到着した。バス停に直行し、全員、11時22分発のバスに乗車し、甲武信ヶ岳企画は無事に終了した。(甲武信ヶ岳の報告:稲葉、金峰山の報告:福山)。
金峰山、甲武信ヶ岳企画に参加して下さったみなさん、ありがとうございました。5月に平標山の企画の準備を始めた頃(幹事は小野)、甲武信も準備を始めました。なかなかタフなコースで悩みながらの企画、検討、実施でした。スタッフの熱意もさることながら、みなさんの熱意がなければこのような大型企画は実施できなかったと思います。幹事としては、感無量の気持ちで終了できました。みなさん、また、充実感を味わいましょう!スタッフ一同、参加されたみなさんに感謝申し上げます。
・参加者:合計15人(申し込み17人、キャンセル2人、金峰山6人、甲武信ヶ岳9人)
・スタッフ:稲葉(幹事)、小野(甲武信ヶ岳班長)、福山(金峰山班長)
・報告:稲葉 力(25年~甲武信ヶ岳)、福山容子(R2年~金峰山)、写真(小野、福山、稲葉、
有田さん、葛西さん、鈴木さん)
紅葉と富士山、見飽きないね(有田さん)
22日の朝6時15分、甲武信小屋を出発する前
甲武信小屋の内部、左側がわれわれのスペース(有田さん)
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