快晴の下、ドレミファ橋、龍崖山、燧山、柏木山、

     吾妻峡谷の低山歩きを堪能した。~2022年9月30日(金)~

 

 人と人とのご縁があるように、山や土地とのご縁を感じることがあります。20年程前、天覧山・多峯主山を歩いた時に出会った方が、これから龍崖(りゅうがい)山にも行くからと別れ際に手を振り、

「いい山ですよ。いつか登ってみてください。」

 

と、招いて下さった時、龍崖山とのご縁が結ばれ、やっと今回の企画に繋がりました。そんな奇しきご縁の山で2年以上振りに幹事復帰が出来た事に、感謝と喜びもひとしおです。

ドレミファ橋を廣川班(小田さん提供)

      久保班

      稲葉班


 

 さて、飯能からのバスの車窓、10月より新シリーズ放映開始、飯能の女子高生の山登りアニメ「ヤマノススメ」の幟が沢山はためいていて、また町おこしに一役かっています。龍崖山、柏木山は作者「しろ先生」のお気に入りの山でもあるのです。

 

 降り立った永田大杉バス停は道路沿い、見えるのは住宅地。それがたった数分歩いただけで、静かな里山の雰囲気に包まれます。手作りの「吾妻峡」案内板を曲がり、神社に手を合せて階段を下れば、突然ドーッと水音が増し、目の前に吾妻峡、ドレミファが現れます。橋の名はド・レ・ミ・ファと歌いながら、飛び石を渡ったことによるとか。童心に返りピョンピョン渡る方も、慎重におそるおそる・・・の方も。渡り終えホッと河原に佇めば、もう暫くここに居たい気持にもなります。また戻って来ますからねと促し、先へと進みます。

 

 最初に登る龍崖山は、嘗てこの地を治めたという大河原氏の要害。山名は、ようがい→りゅうがいと変化したとか。今も殿屋敷跡、聖徳太子を祀った八耳堂、軍太利神社、曲輪、堀切跡などが残っていて往時を偲ぶことが出来ます。


   龍崖山の集合写真(廣川班)           久保班                稲葉班

 

 麓では「龍崖山を愛する80人衆」の方々の気持が伝わる、木彫りの龍や彼岸花のお出迎え、杖まで用意されています。熊除けにぶら下がっている缶を先頭の方に叩いて頂くと、我も我もと叩くこと叩くこと・・・何か鬱憤でも溜まっていたのかな? 力一杯叩くって気持ちいいし、すっきりしますよね!流石に熊も怖れをなしたことでしょう。

 

 一面を赤く覆い尽くす巾着田の風景とは違い、そこここに一輪、数輪と咲く彼岸花が、木漏れ日を浴びてキラキラ、「うわぁ、なんて綺麗!」と、しみじみ観察し、小さなユリのような花が丸く広がり、一輪ずつから1本の長いめしべと6本の葯があるおしべが伸び広がっていることが分かると「あ~なるほどね~」。またもスッキリして何より。

 

 嘗ての棚田の土手には、アキノタムラソウ、ノハラアザミ、シラヤマギク、ノブキ、ミズヒキ、樹木に絡みつくセンニンソウ、ボタンヅル、カラスウリ、ノブドウの実、ママコノシリヌグイ、カニクサ、湿地には、ツリフネソウ、ミゾソバが広がる中、アキノウナギツカミもしっかり蔓延っていて、ママコノシリヌグイと3種のタデ科の、葉の形や茎のトゲの様子の違いを確かめました。1班長は、ミゾソバを原料とする、土方歳三の生家の石田散薬の作り方や服用法、歳三が背負って行商した等の詳しい話しを語ってくれたそうで、私も聞きたかったなぁ


   柏木山の集合写真(廣川班)           久保班                稲葉班

 

 戦前、飯能市に13あった内の一つのマンガン採掘抗跡をのぞき込み、緩やかな九十九折りの坂道を登ります。(今回のコースは女坂。男坂には第1、第2ロープ場の急坂もあり。)親切な「ちょっとひと休み」の看板とベンチに誘われて早速一息。痒いところに手が届くような「おもてなし」がいっぱいです。

 

 程なく山頂下分岐を右へ。少しの下り上り5分程で広い山頂に到着。頬被りした木彫りの少女が見下ろす方向には市街が、その左手には、秩父や奥多摩の山々の風景が広がります。設置された竹筒を覗くとそこに記された山やランドマークを見ることが出来るという心遣いが優しい。 以前、山頂で出会った方に9月末に再訪すると伝えると、『皆さんが来る頃に咲くようにコスモスの種を播くからね』と仰っていたコスモスの花が、足元で小さく揺れていました。

 

 少し下って山頂からは見えない側が見える展望台に続く道には、ススキ、オミナエシ、マルバハギ、コスモスの秋の花々、眼下に工場が広がるのはちょっと無粋だけれど、大震災の後、地盤がしっかりし揺れが少ないと飯能市が誘致したのだそうで、納税と雇用の確保、なかなかやりますね。

      富士見の丘


  廣川班の写真(熊鐘を鳴らす)       ウラジロの群生地               

 

 小ピーク燧山にもベンチあり。午後に登る柏木山が見え、『見える山は遠い』『おお、あそこまで行くのね~』と新たに気合いが入ります。鈴生りの赤いオトコヨウゾメの実が、葉陰で揺れながら見送ってくれました。

 

 木漏れ日の森を下り、龍崖山公園下に着くと、木彫りの双龍が出現。傍らには赤い星形の萼に瑠璃色の実のクサギが沢山! 未だ残っていた白い花からは甘い香り、葉のピーナツバターのような独特な香りも確かめ、上の公園広場へ。途中、辛夷の赤い実を引っ張って糸を引き出しブラブラさせたり、オニグルミ、ゴンズイ、ハンノキ、ウリハダカエデ、ロウバイの様々な果実を観察したりで上っていると、いつも子供に大人気の大滑り台が空っぽなのを発見。『行けばあの長い階段を上らなくてはなりませんよ・・・』と牽制するも、まさかの我が班9名中5名が「滑りた~い♪」と突撃!またもや童心に返りバンザイしながら歓声を上げ滑る滑る~素晴らしい、元気一杯、思い切り楽しまれて何よりです。

 

 見晴らしの良い高台の公園に到着しランチタイムの後、あかね尾根道ハイキング・コースへ。小豆の原種ヤブツルアズキ、大豆の原種ツルマメ、地中にも豆をならすヤブマメ、の3つの見比べ。小さいながらも小豆そっくりの長い莢の中の豆、枝豆そのもののツルマメの莢を見て、『食べられるの?』『これで餡子を作るにはどれだけ集めれば・・・』と、食べられそうなものは盛り上がりますね。他にも、クズ、ノササゲ、トウコマツナギ、メドハギ、ヤマハギ、マルバハギなど、マメ科の花々が盛りでした。


   廣川班の写真(吾妻峡を歩く)       大すべり台に到着       ドレミファ橋で見かけた余裕のくつろぎ                  

 

6月には白い泡の卵塊が沢山ぶら下がっていたモリアオガエルの自生地の池、赤根ヶ峠、カモシカ新道経由で柏木山へ。沢沿い植林の薄暗い道を出ると、ぱぁっと明るいもう一つの棚田跡の中の田舎道。計画では、秋草観察のメインでアケボノソウも期待していたのに、草刈りで綺麗さっぱり・・・ツリガネニンジンもワレモコウもなし。秋草観察は、草刈りが大敵でいつもドキドキですが、ものの見事にやられてしまいました。その先のネナシカズラも、幾ら探してもみつからず、可愛いピンクのイボクサの花は頭を垂れた緑の実となっていました。何でもそうそう思い通りにはならず、その時会える一期一会を楽しむの境地です。

 

 「妖精の住む山」とも呼ばれ、愛らしい木製の小人、カモシカ、手作りの案内板などの様々が見られた柏木山は、市の所有する山に色々工作物を設置していることが市議会で問題となったらしく、撤去されたものも多くちょっと寂しくなりました。寂しいより何より、道迷いが増えているのは問題で、早期の善処を期待しています。

 

別名「高ドッケ」と呼ばれ、ぽっかり大きく開けた柏木山頂からは見事な展望が広がり、富士山もようやくチョコっと頭を覗かせてくれました。山頂には、手作りのベンチやテーブルが幾つもあって、午後カフェや読書をのんびり楽しむ方々を見かけたこともあります。よくみれば、物陰草陰にカモシカや小人が、ちゃんと潜んでいて嬉しい♪


       ノブドウ               ヤブマメ               ヤブツルアズキ

 

 柏木山からの下山は、パワースポット・カモシカ神社、北限のウラジロ自生地で見事な群生を仰ぎ見て、静かなほたる谷経由で茜台自然広場へ。(その他にジャンダルム尾根、百年ナラ尾根のコースもあります。)

 

ほたる谷のミゾソバの花は全体が綺麗な濃いめのピンク色で、とても綺麗。麓ではキバナアキギリの群落が広がり、虫が花の中の退化した雄しべにとまると長い葯のある雄しべが降りてくるシーソーのような仕組みを観察。虫が飛んで来る度に、「入ってとまって!」と応援の声が飛びました。

 

一旦舗装路に出て吾妻峡へと戻ると、行きに見かけた無人販売の柿や柚子が残っていて購入された方も。そして、朝、渡ってきたドレミファ橋の先を飯能駅方面に向かう河原のハイキング・コースを歩きます。爽やかな峡谷の景色、透き通った水の感触、赤岩、兎岩などの奇岩、汽車淵ではガタンゴトンと汽車の動輪の如き水音に耳を傾けつつ、ちょっとした岩場鎖場も経て中平河原キャンプ場でハイキング・コースは終了。

    ヤマジノホトトギス

     オトコヨウゾメ


                                              ミゾソバ

 

再び舗装路に出て、畑のオクラの花や実、たわわに実る柿、コスモスの花等に励まされながら、飯能河原に面した眺めの良い「櫟庵」へ到着。美味しいお蕎麦、うどん、天ぷらに舌鼓。ビールで乾いた喉を潤し歓談の後、今日の思い出や次の計画に心を弾ませながら、それぞれ、飯能、東飯能へと帰路に着きました。

 

 咲き始めの金木犀の甘い香りに包まれ続けた秋の佳き一日。また金木犀が咲く頃が来たら、この香りと共に飯能の里山ハイキングも思い出して頂ければ、まさしく幹事冥利に尽きます。ご参加、誠にありがとうございました。(おわり)

 

参加者:26名(申し込み28名、キャンセル2名)

スタッフ:廣川(幹事)、久保(班長)、稲葉(班長)

報告:廣川(26年)